実践まちづくりファシリテーション講座

「リーダーシップを発揮しろ」と言われて途方に暮れるあなたへ。ファシリテーションこそが、現代のリーダーに必須の最強スキルである理由

その「リーダーシップ」、古い地図を握りしめていませんか?

毎日、複雑な調整業務と終わりの見えない会議の連続、本当にお疲れ様です。政策企画課で奮闘されているあなたのような、熱意ある職員の方々の姿が目に浮かびます。

上司や議会からは「もっとリーダーシップを発揮して、プロジェクトを前に進めろ」と檄を飛ばされ、一方で、住民説明会に足を運べば多様な意見や時には厳しい反対の声にさらされる。その板挟みの中で、「一体、自分はどう振る舞えばいいんだ」と、途方に暮れてしまう瞬間はないでしょうか。

多くの人が思い浮かべる「力強いリーダー」という幻想

私たちが「リーダーシップ」と聞くと、多くの場合、力強い言葉で方針を指し示し、迷うことなく集団をぐいぐいと引っ張っていく、そんな姿を思い浮かべがちです。まるで、絶対的な正解が書かれた地図を一人だけが持っていて、その目的地に向かって皆を導いていくようなイメージです。

しかし、私が長年、行政の現場で痛感してきたのは、その「古い地図」が、もはや現代のまちづくりという複雑な航海では役に立たないという厳しい現実でした。

なぜ、あなたの「想い」は空回りしてしまうのか

考えてみてください。私たちが向き合う「まち」は、単純な課題解決を許してはくれません。様々な世代の住民、事業者、議会、そして庁内の各部署。それぞれが異なる価値観と利害関係を持ち、その声はSNSなどを通じて、かつてないほど可視化されるようになりました。

このような状況で、かつてのリーダーのように「これが正解だ」と一方的に地図を広げても、かえって「なぜ勝手に決めるんだ」という強い反発を生むだけです。良かれと思って進めたはずのプロジェクトが、気づけば暗礁に乗り上げ、前に進むどころか、関係者との溝を深めてしまう。そんな苦い経験を、あなたも一度は味わったことがあるかもしれません。

これからの航海に必要な「新しいコンパス」

もし、その出口のないようなプレッシャーから解放され、むしろ多様な意見をプロジェクトの推進力に変えることができる、新しいリーダーシップのあり方があるとしたら、少しだけ、耳を傾けていただけますでしょうか。

それは、古い地図を握りしめて先頭をひた走るスタイルではありません。代わりに「新しいコンパス」を手に、皆が自ら進むべき道筋を見つけ、納得して一歩を踏み出せるように、そのプロセスを巧みにデザインしていく。この記事では、そんな現代のリーダーに不可欠なスキル、そして「ファシリテーション」との決定的な関係について、具体的にお話ししていきたいと思います。

第1章:なぜ、あなたの「正論」は誰にも響かないのか?- 伝統的リーダーシップの限界 –

誰よりも熱心に資料を読み込み、関連法規を調べ上げ、ロジカルに導き出した「正論」。地域の未来を思えばこそ、この方針が最善のはずだ。そう信じて会議や説明会に臨んだにもかかわらず、なぜか周囲の反応は冷ややかで、プロジェクトが少しも前に進まない。

もしあなたが、そんな歯がゆさや、時には無力感にも似た感情を抱いたことがあるのなら、それは決してあなたの能力や熱意が足りないからではありません。むしろ、あなたが手にしているその「古い地図」、つまり「伝統的なリーダーシップ」そのものが、現代という時代に合わなくなっているサインなのかもしれないのです。

かつては「正解」だった、指示命令型のリーダーシップ

ここで一度、その伝統的なリーダーシップがどのようなものであったか、少しだけ振り返ってみましょう。それは多くの場合、「指示命令型」や「トップダウン型」と呼ばれるスタイルでした。つまり、経験と知識が豊富なリーダーが意思決定を行い、その指示に部下や関係者が従って実行するという、ピラミッド型の組織構造(いわゆるヒエラルキー)を前提としたやり方です。

このスタイルは、日本が高度経済成長を遂げた時代など、社会全体の目標が比較的シンプルだった頃には、絶大な効果を発揮しました。「新しい道路を造る」「工業団地を誘致する」といった、ゴールが明確で、効率とスピードが何よりも求められる事業において、迅速な意思決定を可能にする、極めて合理的な手法だったのです。

立派な「設計図」が、かえって反発を招く時代へ

しかし、ご存じの通り、時代は大きく変わりました。人口減少、少子高齢化、環境問題、そして何よりも人々の価値観そのものが、驚くほど多様化しました。もはや、まちづくりに唯一無二の「絶対的な正解」など存在しない。私たちは、そんな複雑な時代を生きています。

ここで、ひとつの場面を想像してみてください。あなたは、地域の活性化のために、完璧な「駅前再開発の設計図」を描いたとします。様々なデータを分析し、専門家の意見も取り入れた、非の打ち所のない計画です。しかし、その立派な設計図を意気揚々と住民説明会で提示した瞬間、会場から次々と声が上がります。「私たちの愛着ある商店街はどうなるんだ」「そんな高いビルが建ったら、日当たりが悪くなるじゃないか」「計画ありきで、住民の声を聞く気がないのか」。

これは、まるで最高の家を建てようと完璧な設計図を用意したのに、いざ住む人に見せたら「こんな間取りは嫌だ」「キッチンはもっと広くしてほしい」と、全く受け入れられなかったようなものです。かつては、立派な設計図さえあれば、誰もが喜んでくれると信じられていたのに、です。

問題は「内容」ではなく「プロセス」にあった

なぜ、これほどまでに論理的で正しいはずの計画が、人々の心を動かすどころか、かえって強い反発を招いてしまうのでしょうか。

私がこれまでの経験で確信していること。それは、問題の根源は、計画の「内容」そのものの正しさにあるのではない、ということです。本当の問題は、その計画が出来上がるまでの「プロセス」、つまり「進め方」に潜んでいます。

人々は、たとえ最終的な結論が自分たちの意見と多少違っていたとしても、「自分たちの声に真剣に耳を傾けてくれた」「自分たちも計画づくりに参加した」という実感があれば、不思議と納得し、協力してくれるものです。逆に、どんなに素晴らしい計画であっても、自分たちが「無視された」「一方的に決められた」と感じた瞬間に、心を固く閉ざしてしまうのです。

この伝統的なリーダーシップが持つ構造的な限界。それに気づくことは、決してリーダーとしての自信を失うことではありません。むしろ、このどうしようもない壁の存在を認めることこそが、次の一歩を踏み出すための、最も重要なスタートラインになるのです。

では、私たちはこの壁をどう乗り越えれば良いのでしょうか。そのための強力なヒントが、次にお話しする「ファシリテーション」という考え方の中に隠されています。

第2章:会議の”司会者”で終わらない。「合意」を生み出すファシリテーションの本質

第1章では、伝統的なリーダーシップが現代のまちづくりで限界に直面していることをお話ししました。では、その壁を乗り越える鍵となる「ファシリテーション」とは、一体何なのでしょうか。

「ああ、ファシリテーションね。会議で『では、次に〇〇さんお願いします』と進行する、あの司会者のことでしょ?」

もし、あなたがそのように思われているとしたら、それは決して間違いではありません。しかし、それはファシリテーションが持つ、広大で豊かな可能性の、ほんの入り口に過ぎないのです。本来のファシリテーションは、それとは似て非なる、もっと奥深く創造的な役割を担っています。

あなたの仕事は「進行」ではなく「促進」すること

ファシリテーション(facilitation)という言葉は、もともとラテン語の「facilis(ファシリス)」、つまり「容易にする、簡単にする」という言葉から来ています。ここが非常に重要なポイントです。ファシリテーターの仕事は、単に会議を時間通りに「進行」することではなく、集団が自らの力で、より良い結論にたどり着くプロセスそのものを「促進」し、「容易に」することにあります。

思い出してください。伝統的なリーダーは、自らが「答えを与える人」でした。それに対して、真のファシリテーターは、「参加者から答えを引き出す人」なのです。そのために、あらゆる知恵と技術を駆使します。

あなたは「シェフ」ではなく、「最高のキッチン」の設計者

ここで、少し視点を変えて、まちづくりを「料理」に例えて考えてみましょう。

単なる「司会者」は、渡されたレシピ(つまり、議題)を読み上げ、調理手順を時間内に終えることだけを考えます。出来上がった料理が美味しくなくても、それは料理人(つまり、参加者)の責任だと考えます。

第1章で登場した「伝統的なリーダー」は、自分が最高の腕を持つ「カリスマシェフ」です。自分が考えた最高のレシピ(つまり、計画)を信じ、他の人の意見は聞かずに一人で調理してしまい、「さあ、これが一番うまいんだから文句を言わずに食べなさい」と、完成した一皿を皆の前に差し出します。

では、「ファシリテーター」はどうでしょうか。彼は、自ら包丁を握るシェフではありません。彼は、誰もが最高の料理を作れる「最高のキッチン」を設計する専門家です。

まず、「今日はどんな料理を、誰のために作りましょうか」と、ゴールを皆で共有することから始めます。そして、参加者一人ひとりが持っている最高の食材(つまり、知識、経験、意見、想い)を引き出すために、「この料理には、どんな隠し味が合うと思いますか」と質の高い「問い」を投げかけます。さらには、最高の調理法(つまり、議論の進め方やルール)を提案し、全員が安心して調理に参加できる雰囲気(つまり、心理的安全性)を作り出します。

その結果、そこに生まれるのは、カリスマシェフ一人の力では決して作れなかった、多様な食材の持ち味が最大限に活かされた、驚くほど創造的で深みのある一皿(つまり、全員が心から納得できる合意)なのです。

「結論」ではなく「プロセス」に全責任を負う専門家

この例えからも分かるように、ファシリテーターは議論の「結論(中身)」そのものに責任を負うわけではありません。どんな料理が完成するかは、あくまで参加者である料理人たちに委ねられています。

ファシリテーターが全責任を負うのは、その結論に至るまでの「プロセス」です。参加者全員が主体的に関われたか、意見が対立した時にも建設的な対話ができたか、そして最終的に導き出された結論への全員の納得感は高いか。この「プロセスの質」を担保することこそ、ファシリテーションの本質であり、専門性なのです。

この視点を持つと、これまであなたの頭を悩ませてきた「まとまらない意見」や、耳の痛い「反対意見」が、まったく違って見えてきませんか。それらはもはや、議論を妨げる厄介な障害物ではありません。むしろ、自分一人では思いつけなかった、より良い結論にたどり着くための「貴重な食材」に他ならないのです。

では、目的地を示すリーダーシップと、プロセスを設計するファシリテーション。この二つをどう組み合わせれば、私たちのプロジェクトという船は、力強く前進することができるのでしょうか。次の章で、その関係性を詳しく解き明かしていきましょう。

第3章:「ビジョン」と「プロセス」- リーダーシップとファシリテーション、最強の組み合わせ方 –

これまでの話をお聞きになって、聡明なあなたはおそらく、新たな疑問に突き当たっていることでしょう。「ぐいぐい引っ張るリーダーシップはもう古い。これからは皆の力を引き出すファシリテーションが重要だ。…だとしたら、自分はリーダーであることをやめて、ファシリテーターに徹すれば良いのだろうか?」

そのように、二つの役割の間で揺れ動いてしまうお気持ち、痛いほどよく分かります。しかし、ご安心ください。その問いの立て方こそが、実は多くの人が陥ってしまう「思考の罠」なのです。

「どちらが優れているか」という不毛な問い

私たちはつい、「リーダーシップか、ファシリテーションか」というように、二つのものを対立させて、どちらか一方を選ぼうとしてしまいがちです。しかし、私はこの二つを、全く別の次元で捉えるべきだと考えています。

それはまるで、「自動車にとって、力強いエンジンと、地面に力を伝えるタイヤは、どちらが重要ですか」と問うようなものです。答えは明らかですよね。両方がなければ、車は一ミリも前に進むことはできません。リーダーシップとファシリテーションも、それと全く同じ「車の両輪」の関係なのです。

リーダーシップが「なぜ」を、ファシリテーションが「どうやって」を担う

では、この二つの役割分担は、具体的にどうなっているのでしょうか。私はいつも、このように説明しています。

リーダーシップが担うのは、「なぜ、私たちはこの頂を目指すのか」という問いに答えることです。それは、プロジェクトで実現したい、心が奮い立つような未来像(つまり、ビジョンや大義)を力強く指し示す役割です。人々の心に火を灯し、「その未来を自分たちの手で実現したい」という情熱を引き出す、プロジェクトの「魂」を吹き込む仕事と言えるでしょう。

一方、ファシリテーションが担うのは、「では、その頂へ、私たちはどうやってたどり着くのか」という問いに答えることです。それは、多様なメンバーが持つ知識や経験を結集し、誰もが納得できる安全で創造的な道のり(つまり、プロセス)を設計し、水先案内をする役割です。プロジェクトの「骨格と血流」を作り上げる仕事と言えます。

最高の登山体験は、二つの力から生まれる

ここでもう一つ、今度は「登山」に例えてみましょう。

卓越したリーダーは、山の麓で皆に語りかけます。「あの頂上から見える景色は、私たちの想像を絶するほど素晴らしい。困難な道のりになるかもしれないが、共に挑戦し、その感動を分かち合おうじゃないか」。この言葉が、人々の挑戦意欲を掻き立てます。これが、リーダーシップの力です。

そこに、優れたファシリテーターが現れます。「素晴らしいビジョンですね。では、その頂上に安全にたどり着くために、皆さんの体力や経験を考慮しながら、最適な登山計画を一緒に作りませんか」。彼は、ルートの選択肢を示し、役割分担を促し、起こりうるリスクへの備えを問いかけます。これが、ファシリテーションの力です。

もし、リーダーの情熱だけしかなければ、その登山は無謀な計画となり、途中で遭難してしまうかもしれません。逆に、ファシリテーターの完璧な計画だけがあっても、そもそも誰も「その山に登りたい」と思わなければ、プロジェクトは始まりすらしません。人々の心を動かす「ビジョン」と、それを現実にするための「プロセス」。この両輪が噛み合って初めて、プロジェクトという登山は、成功へと導かれるのです。

プロジェクトの段階で、求められる力は変わる

さらに言えば、この二つの力は、常に五十対五十で求められるわけではありません。プロジェクトの進捗段階によって、その比重はしなやかに変化します。

プロジェクトの初期、まだ何も形になっていない構想段階では、リーダーシップの比重が大きくなります。ビジョンを熱く語り、仲間を集める力が不可欠です。しかし、プロジェクトが具体的に動き出す計画・実行段階に入ると、今度はファシリテーションの比重が高まります。多様な関係者との緻密な合意形成や、複雑な課題解決のプロセスを設計する力が求められます。そして、もしプロジェクトが壁にぶつかり、停滞してしまった時には、再びリーダーシップの出番です。原点であるビジョンに立ち返り、チームの士気を鼓舞する力が必要になるのです。

リーダーシップとファシリテーションは、どちらかを選ぶものではなく、一人の人間が、状況に応じて自在に使い分けるべき、最強の武器セットなのです。

では、この二つの力を巧みに操るリーダーとは、一体どのような存在なのでしょうか。次の章では、これからの時代に本当に求められる、新しいリーダーの姿を具体的に描いていきたいと思います。

第4章:あなたがなるべきは「絶対的な正解者」ではない。- まちづくりリーダーの新たな役割 –

ビジョンを示すリーダーシップと、プロセスを設計するファシリテーション。この二つを自在に操る。言葉にするのは簡単ですが、「自分にそんな器用な真似ができるだろうか」と、かえって新たなプレッシャーを感じてしまった方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、ここで、これまでの議論の核心であり、そして何より、日々奮闘するあなたの肩の荷をそっと降ろしてくれるであろう、一つの大切な真実をお伝えさせてください。

「賢者」から「触媒」へ、役割のパラダイムシフト

これからの時代に求められるリーダーは、もはや、すべての答えを知っている全知全能の「賢者」である必要はないのです。あなたが目指すべきなのは、それとは全く異なる役割。それは、人々の知恵や想いが出会い、素晴らしい化学反応が起きるのを助ける「触媒」としての役割です。

考えてみてください。「賢者」は、常に自分が一番賢く、正しくなければならないという、孤独で果てしない重圧を背負い続けます。しかし、「触媒」は違います。触媒自身は、答えを持っていません。答えは、周りにある様々な物質(つまり、多様な関係者たちの意見や経験)の中にすでに眠っていると信じています。触媒の役割は、それらが出会い、結びつくのに最適な「場」と「条件」を整えることだけ。その結果、自分一人では到底生み出せなかった、想像を超えるような素晴らしい生成物(つまり、創造的な解決策)が生まれるのです。

この「ファシリテーター型リーダー」とも呼ぶべき新しい役割は、あなたを「正解を知らねばならない」という呪縛から解放してくれます。

明日から意識したい、3つの行動変革

では、この「触媒」として機能するリーダー、つまり「ファシリテーター型リーダー」は、具体的にどのように振る舞うのでしょうか。ここでは、あなたが明日からすぐに意識できる、三つの具体的な行動をご紹介します。

行動1:指示する代わりに「問いかける」

伝統的なリーダーが「この方針で進めなさい」と指示(クローズドな命令)をするのに対し、ファシリテーター型リーダーは「この課題を解決するために、私たちはどうすればいいだろうか」と問いかけ(オープンな質問)をします。たったこれだけの違いで、受け取った側の思考は停止から一転、当事者として「自分ごと」で考え始めるのです。

行動2:自分が話す代わりに「聞く場」を作る

会議の場で、つい自分が一番長く話してしまっていませんか。ファシリテーター型リーダーは、その逆をいきます。あえて口数を減らし、他の人が安心して本音を話せる雰囲気(つまり、心理的安全性)の構築に全力を注ぎます。沈黙を恐れず、じっと待つ。その姿勢が、これまで声なき声であった貴重な意見(=最高の食材)を引き出すのです。

行動3:反対意見を「封じる」のではなく「受け止める」

プロジェクトへの反対意見は、あなたにとって耳の痛い、厄介なものでしょう。しかし、それを感情的に否定したり、論破しようとしたりするのは、最も避けたい対応です。ファシリテーター型リーダーは、まず「なるほど、そのようにお考えなのですね。貴重なご意見ありがとうございます」と、一度まるごと受け止めます。反対意見は、私たちが見落としていたリスクや新しい視点を教えてくれる、最高の贈り物なのです。この姿勢こそが、炎上を防ぎ、長期的な信頼を築く礎となります。

なぜこのスタイルが、現代のまちづくりで最強なのか

このファシリテーター型リーダーのスタイルは、単なる綺麗事や理想論ではありません。現代の複雑なまちづくりにおいて、最も合理的で、プロジェクトを成功に導く確率が高い、極めて実践的なアプローチなのです。

なぜなら、このプロセスを経て導き出された結論は、リーダー一人が押し付けたものではなく、「みんなで考え、決めたこと」になるからです。そこには強烈な当事者意識と納得感が生まれ、行政主導の「やらされ仕事」は、地域を動かす「自分たちのプロジェクト」へと昇華します。

そして何より、このやり方は、あなたという一人のリーダーの超人的な能力に依存しません。あなたが異動になった後にも、地域には「自分たちの力で課題を解決できる」という経験と文化が残ります。これこそが、真に持続可能なまちづくりではないでしょうか。

あなたが目指すのは、孤独なヒーローではありません。素晴らしい仲間と共に、より大きな仕事を成し遂げる、信頼される伴走者なのです。

さあ、最後の章で、これまでの議論を整理し、あなたが明日から踏み出せる具体的な第一歩を一緒に確認していきましょう。

まとめ

ここまで、長い道のりだったかもしれません。私たちは、伝統的なリーダーシップがなぜ現代で通用しづらくなったのかという現実から出発し、ファシリテーションの本質、そしてその二つを組み合わせた「ファシリテーター型リーダー」という新しい時代のリーダー像まで、一緒に旅をしてきました。

最後に、あなたの思考の地図を新しいものに書き換えるために、これまでの議論の要点を整理しましょう。

思考の地図を書き換えよう、二つのリーダー像の比較

項目伝統的なリーダー(古い地図)ファシリテーター型リーダー(新しいコンパス)
役割認識答えを知っている賢者答えを引き出す触媒
力の源泉個人の知識、経験、権威集団の多様な知恵、関係性
会議での振る舞い自分が一番多く話す、指示する皆が話せる場を作り、問いかける
反対意見への対応封じ込める、論破する貴重な情報源として受け止め、深掘りする
目指すゴール計画通りに「実行させる」全員が納得する「合意を創る」

さあ、あなたの「はじめの一歩」を踏み出そう

この新しいリーダー像は、あまりに理想的に見えて、すぐには実践できないと感じるかもしれません。当然です。長年慣れ親しんだやり方を変えるのは、誰にとっても勇気がいることです。

ですから、まずはたった一つ、ほんの小さな一歩で構いません。明日、あなたが参加する会議で、これを試してみてはいかがでしょうか。

それは、議論が行き詰まった時に、いつものように自分の意見で場を収めようとするのではなく、ぐっとこらえて、こう問いかけてみることです。

「少し視点を変えてみませんか。この問題で、私たちがまだ気づいていない大切な論点は、何でしょうか」

このたった一言の「問い」が、停滞した場の空気を変え、あなた自身の役割を「答えを出す人」から「答えを引き出す人」へとシフトさせる、魔法の言葉になるかもしれません。

あなたが日々直面している、あの結論の出ない会議や、炎上しがちな説明会。それは、見方を変えれば、地域と共に未来を創造する、最高にエキサイティングな「対話の場」なのです。古い地図を握りしめて孤独に戦うのをやめ、新しいコンパスを手に、多様な仲間と航海する喜びを、ぜひ味わってください。

あなたは、決して一人ではありません。その真摯な想いは、必ずや地域に届き、人々を動かす力となります。自信を持って、あなたのプロジェクトという船を、新たな海へ漕ぎ出してください。心から応援しています。

NOTE

業務ノート

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